先に申し上げておくが、この記事にはネカマ・ネナベプレイを批判する意図はない。
これも私の体験ではない。
10年前、私の知人男性(以下A)はオンラインゲームを通じて20歳年下の女性(以下B)と知り合った。
Bはまだ10代であった。
そもそも子供に興味のないAは下心など抱くことなく、単にネット上の女友達として接していた。
当時Aは圧迫的な職場の環境にうつ病を発症した。
職場で「現実の女性」に幻滅したこともあり、異性に対する興味は薄れていった。
(だからといって同性に走ったわけではないが)
仕事は簡単にやめられないが、趣味のサークル活動はやめてしまった。
代わりにオンラインゲームで遊ぶことにしたのだった。
まるで恋人同士なのだ。
Aの言動には相手を勘違いさせるに足るものがあった。
AのキャラクターがBのキャラクターを後ろから抱きかかえるようにして座り、その状態で何時間もチャットをしたという。
AはBに、ネカマについての話をしたことがあった。
自分が女性視点でロールプレイをするなんて考えられない。
性別を気にせずプレイできる人はすごい。ある意味で尊敬する、とAは言った。このことに対して、Bは何も言わなかった。
AとBはオンラインゲーム上で結婚した。
結婚したキャラ同士のパラメータが強化される仕様なのである。その後Aはうつ病が悪化し、オンラインゲームで遊べなくなった。
Bにはそのことを告げられず、ログインすらできない状況であった。
その4年後、ようやく調子が戻り、ログインできなくなった理由をツイッター上でBに伝えることができた。
4年間、同じゲームで毎日遊んだ仲である。
些細なことを話し、同じ時間を共有した遊び仲間だった。だが、互いのすべてを知っているわけではなかった。
「確かに友達以上の存在だった。でも恋人になる選択肢は自分にはなかった」とAは語る。きっかけはAがBのツイートを閲覧したことに始まる。
ツイートを辿って最近のつぶやきを見ると、 「中の人は男ですよってお話」
「今後何かしら声出す機会があった時に変に誤解されても困るから一応」
等とさらりと呟かれていた。
Aがショックを受けたのはBが男であったというツイート自体ではない。
自分に対してずっと嘘をついていた、という現実である。
ネカマに対しての意見を、Bは何も言わないことで流した。
巷に流れるネカマの話題に対しても「w」と返して平然としていた。
要はその会話の間もAを欺いていたのである。
Aは「思い出が壊れてしまった」と語る。
それまで認識していたBの人となりはどこまでが真実なのか。
性別だけでなく、あらゆることが嘘だったのではないか。
疑いもしない自分をBは嘲笑っていたのではないか。
Aはそう思ったのである。
親しい友人に嘘をつかれることに対して抵抗のない人はほとんどいないだろう。
もっとも、親しいと思っていたのはAだけだったのかもしれない。
ネット上では誰もが自分を偽れる。
件のツイートの真偽すら当の本人にしかわからない。
ロールプレイにはこういう楽しみ方があるとでもいうのだろうか。
しかし後ろ暗さを抱えてまですることだろうか。
私が不気味さを覚えたのは、それまでずっと使ってきたハンドルやアカウントを変えずに、過去を隠そうともしないで件のツイートをしているBに対してである。
Bにとって10年前のAはこれからも「旦那様」なのだろう。
興味深いとともに改めてネットというものを知った次第である。
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